『菊の花に蝶が舞う』
秋に咲く美しい花。
菊は仏花としても使用される。
天を仰ぎ、死者にたむけられ、あちらとこちらを繋ぐ。
お墓で供えられた菊に戯れる蝶をみる度、
先祖や黄泉の国からの使者のような気がして、世界が繋がってるように感じていた。
ここの家の最後の住人である菊池サクさんは、今年の3月に亡くなった。
サクおばあちゃんもいなくなり、ほとんど使われなくなってから、
このお家は急激に老化していっただろう。
家も呼吸し、生きている。住む人の空気が染み渡り、表情を変える。
この家はもう使われていないが
ただ、ここには住んでいたおばあちゃんとご一家の残り香が今も色濃く漂う。
その残り香と家が今も愛おしく思われていることを鮮明に感じると、
その人が住んでいた風景を想像する。
サクおばあちゃんは、キク科のコスモスの花が大好きだったという。
今年も秋花が咲き、蝶がやってくる。
菊の花に蝶が舞うように、あちらとこちらを行き来してみたいと思う。
常陸太田に、水府に、この家に生きたおばあちゃんの人生を追体験し、
ここに生きた人と家の姿を味わってもらいたい。
そうしたら今日、あの頃の風景が蘇るかもしれない。
2014 10月 東山佳永
<作品概要>
会場は常陸太田市、水府地区の高台にある菊池さんのお家。
そこに長年住んでいたサクおばあちゃんは3月に亡くなった。
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その家の玄関を入ると、サクさんとのぼるさんの写真、その前に顔の書いていない人形が。
『こちらの人形に割烹着を着た菊池サクおばあちゃんを一体描いて下さい。』と書いてあり
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その次に本当にサクさんが使っていた割烹着があり
『割烹着を着て下さい。おばあちゃんになったら、こちらへどうぞ。』
とあり、その奥が会場の部屋になっている。
その部屋の畳は床から一段上がっていて非日常と日常の間。少しだけ空のサクさんに近い。
孫に扮した東山と共に、参加者はそこに机を囲んで座る。
浮かんだ畳の上で、複数のおばあちゃんが机を囲む。
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机の上には水彩画で描いた菊池さんちに、透明なシートを重ねお家の中から空へと進む人生ゲームが。
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それぞれにつくっていただいたサクさんのコマをスタートに置いて、人生ゲームが始まる。
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マスにはサクおばちゃんとのぼるおじいちゃんの本当の日常のエピソードが書いてあって、
サクおばあちゃんとしてゲームを進めるお客さんは、
おばあちゃんを演技しながら実際にそのことを体験していく
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例えば、あるマスには
『新しい家が建った記念に息子と写真を撮る』とあったり。
またあるマスには
『孫にお小遣いをあげる』
『坂道で転んで、動けなくなる(一回休み)』
『若いころの走馬灯を見る』
進んでいくにつれて、老いていく。
そうしてゴールに向かって、空の上のマスへ進んでいきます。
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ゴールは天国の雲の上。
最後のマス
『天国で息子からの手紙を読む』
人生ゲーム終了後は
地域の方々の手料理を囲みながら
サクおばあちゃんとおじいちゃんのお話をし
今と重なりあい作品が終わっていく。
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水彩/画用紙/デコペン・シート/折り紙/割烹着/紙粘土/他
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